香りという名のハードル

キルギスでよく食べられる羊肉を、日本人の中には苦手に感じる人がいると書いたが、もう一つというかもう一ジャンル、異文化の食事でハードルとなりやすいのが香辛料・香菜の類である。これはキルギス料理だけでなく、一般的にそうである。

何で香辛料とか香菜って、あんなに好き嫌いがはっきりしてしまうのか不思議だが、「香」の字が入っている通り、香りに関係した食材であるから、香り・匂いが人間の食事の好みに関係しているんではないかな? ある種の匂いは、遺伝子レベルで好悪が識別されている。それは危険を察知するための人体の機能として備わっている。

もう一つは、幼少時の味覚経験によって形成される香りへの親和性。これは後天的にできあがる好き嫌いである。日本の市販のルーで作ったカレーは大好きという人が、スパイス王国、本家インドのカレーはちょっと、ということもある。これは慣れの問題が大きいような気がする。

私自身、始めてパクチー(英語名「コリアンダー」)を最初に食べた時、その香りに強烈な違和感を覚えたものだが、食べ続けてみると、ある種の料理についてはパクチーなしでは考えられないほど好物&必須の香菜となった。

キルギスにも「укроп(ウクロップ)」と呼ばれる香菜があって、これを細かく刻んで様々な料理にパラパラと振って香りを付ける。ウクロップはロシア語名で、英語だとdill(ディル)。日本から旅行に来たメンバーの一人が「これディルじゃない?」と言っていて、その時は調べる間がなかったが、今回調べてみたら確かにディルであっていた。ちなみに和名は「茴香(ウイキョウ)」で、これは果実部分を指すらしい。

私にとっては、ウクロップも羊肉同様、キルギスに来てから好物になった食材で、日本に帰ったらこれが食べられなくなるのかと寂しくなり、種をこっそり持ち込んで自家栽培しちゃおう(←いけませんよ~!)かとさえ思い悩んでいたのだが、ディルという形で普通に家庭菜園で扱えるらしいからひと安心である。

あらためて考えれば、香り以外にも異なる食文化を受け入れる際にハードルとなる要素は色々ある。辛さ、酸味、食感(ババロア、プリン的な食感が嫌いな人は一定数いるようだ)、見た目(虫を食べるのとか)など。また、宗教的な禁忌の類は、基本的には生理的な好き嫌いとは関係ないはずだが、それを幼少時から生活習慣として教えられ守っているうちに、生理的にも嫌いな物になってしまうようだ。日本人が狗肉を食べるのに抵抗を感じるのだって、そういうものであろう。

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