1月が終わる。「もう一年の12分の1が終わりです」「時が経つのは速いですねぇ」というテレビキャスターが言うようなお決まりの文句は言いたくないと思いつつも、確かに実感として、新年の花火が打ち上げられるのを見てからのこの1ヶ月間は「気づいたら終わっていた」という感じである。
よく子供の時分は時間が経つのが遅く感じられ、歳を取るに連れ時間の流れが速く感じられるようになると言われる。時計の秒針がチッチッときざむ物理的な時間の流れは一定だが、それとは別に心理的な時間の流れがあるという。
自分が子供の頃は、そういう話を大人がしているのを聞いても、「そんな不思議なことがあるものかしら」「自分はそう感じないかもしれないぞ」などと思ったものだが、この歳になってみると、確かにそんな風に月日時間は過ぎていくようだ。大人から言い聞かされて来たことが刷り込まれて、そういう目で見ているからかも知れないが、それだけでもないように思う。実感がある。
大体において、幼少時に大人から聞いた話というのはこんな風である。その時は意味が分からないのだが、歳を取ると「あっ、このことを言っていたのかも」とポンと膝を打ちたくなるような場面・心情に遭遇する。きっと、私にそういう話を語った両親・祖父母・親戚・その他の大人達も、そのまた上の大人達から同じような話を聞いていたはずである。
子供の時にはどんなに背伸びをしても分からなかったことが、大人になると実感として分かる。これは歳を取ることの最大の愉悦ではなかろうか?
美容エステ、サプリメント、運動器具を売らんとする「アンチエイジング・コマーシャリズム」では、歳を取ることの効能・長所が語られることは絶対にないが、我々はもっと老いるメリットを語らなくちゃならんのじゃないですかな? だって、みんな生きてりゃ歳を取るんだから、なんか楽しみを見つけましょうや。