2011/11/07

キルギスの蜂

外出の際には冬の格好をしている今の時季に、ちょっと季節を戻って蜂の話を書く。

昨年、村に赴任した当初、蝿と蜂がやたらと飛び回っていることが印象に残った。食事をしていると、テーブルの上にあるパンやサラダに蝿が留まるので、いちいち手で追い払っていた。村にいた先輩隊員は「すぐに慣れますよ」と言っていたが、確かにじきに慣れていった。

蜂もテーブルの回りをブンブン飛び回っていて、彼らの狙いはジャムや蜂蜜などであった。蜂と聞くと刺されると思って怖がってしまうのだが、当地の蜂は攻撃的ではなく、向こうから襲ってくる(刺してくる)ことはない。私は一度だけ指を刺されたことがあるが、それもたまたま蜂と私の手が鉢合わせ(ダジャレじゃないよ)してしまって、蜂が刺してきたのだろう。

honey_bee2(キルギスの蜂。日本のミツバチとは違う種類のようだ)

キルギス人はパンを毎食必ず食べるから、どの家の食卓にもジャムがある。蜂蜜はちょっと値段がはるので、いつもとは限らないが、これも紅茶に溶いたり、パンに付けたりするために食卓にある。蜂はそのジャムや蜂蜜をあつめに来るのであるが、そもそも蜂蜜は彼らが集めた物を、人間様が奪ったのだから、彼らにしてみれば奪い返しに来たと言いたいかも知れぬ。

家では茶碗・小鉢のような入れ物に蜂蜜が入っているのだが、蜂は「それ、ごちそうだ」と飛び込んで来る。花からちまちまと集めるのに比べたら、山盛りの蜜があるのだから、蜂にしてみればこれ以上ない宝である。

ところが、蜂たちが蜜集めに精を出す夏場は、温度が高いから、蜜は溶けて粘液状になっている。宝の山と喜び勇んで蜜に飛び込んだ蜂たちは、哀れ、蜜の池の中で羽や足がからめ取られ、身動きできなくなってしまうのであった。

honey_bee 
(蜜地獄にはまった蜂たち)

たまに、蜜地獄から這い出す蜂も見かけるが、羽が蜜まみれになって、もう飛び立つことはできず、テーブルの上に蜜の痕を残しながら、ずるずると這いずっている。「蜜地獄」と書いたが、蜜にまみれて息絶えていくのは、彼らにとってはむしろ本望だろうか…

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