首都にも野良犬がいる

キルギスの首都、ビシュケクの風景。

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(首都ビシュケクの路上で寝そべる野良犬)

発展途上国とは言っても、人口100万人の大都市である。そんな町の中にも野良犬がフラフラしている。

マレーシアでも野良犬がいた。旅行で訪れたバンコク(タイ)でもいた。

日本では、特に都市部では野良犬はゼロである。犬に咬まれる事故とか、狂犬病感染とかを予防するために、つながれていない犬は保健所が捕獲してくれる。その仕事をしてくれている役所の人たちには感謝すべきだし、なによりも我々の生活の安全が守られていることはありがたい。

でも、なんか釈然としない感じも残るのである。

キルギス、マレーシア、タイ、ほかにも野良犬がいる国はたくさんあるはずだが、なんでそういう国々では野良犬の存在が許されて、日本(の都市)では許されないのだろう? それらの国は途上国だから野良犬がいる、ということか? でも、野良犬との付き合いの熟達度で言ったら、あちらさんのほうが断然、先進国だと思うのだが…。

思い返してみると、私の幼少時には、まだわずかながら野良犬がいた。祖母に連れられて歩いている時に、腹を空かした野良犬が食べ物ほしさに我々の後をつけてきていて、祖母が追っ払っている光景が記憶にある。

狂犬病が発生するのも厭わずに野良犬を黙認すればよい、とも思わないが、野良犬がいる場所の人たちは、犬への対処も心得ている。ひとことで言えば「手荒い」扱いである。野良犬がまとわりついてくるようなら、石を投げつける。屋台で食べているところに近寄って来たら蹴飛ばす。

(ただし、タイでは事情は違った。仏教国であるせいか、野良犬も大事にしているようで、むやみに脅かしたり、蹴ったりはしていなかった。野良犬は追っ払うのが常識だと心得ていた私が、寄って来た野良犬どもを足蹴にしていたら、現地の人たちがやや遠巻きに目を丸くしている感じであったので、私も「なんか、俺のほうが悪いの?」と立場が悪くなった気がした。どこの国でも野良犬をいじめているわけではないので、タイ人の名誉のために書いておく。)

石を投げつけたり、蹴飛ばしたりするのは、もちろん残酷な行為である。動物虐待に違いない。しかし、役所が野良犬を捕獲してくれる日本では、我々の見ないところで犬たちは処分されている。いや、野良犬だけでなく、飼われていた犬も飼い主が蓄犬預かり所のようなところに持っていき、そこで殺処分されている。状況が違うから、どちらが「より残酷か」という話をするのではないが、少なくとも、日本人が野良犬に石を投げつけて追っ払っている連中を指して非難するのはあたらない。

別にキルギスでは、絶えず犬に石をぶつけているわけではない。こちらに向かってきそうな気配がする犬は追っ払うだけである。人間も己の身を自分で守るために、犬の動向に注意を向けているわけだ。危険を察知する感覚を常に持っていなければならぬわけで、身の安全を役所任せにしているのとは、道を歩いている時の神経の使い方も違う。

私は目の前で見たことがあるわけではないが、海外へ旅行に行った日本人が、現地で犬に咬まれることが結構あるのだという。「おいで、おいで」と犬に近寄って(近寄らせて)、頭をなでようとする。そこへ「ガブリ」とやられる。犬はペットとしてしか認識しない環境で暮らしている者が、野良犬にも同じ感覚で近寄っていって起こる事故である。そういうことができるのはムツゴロウさんだけなのである(ってこともないが)。

自分の身を野良犬から守ろうという感覚を持たずに暮らせる所では、人間の野性感覚も衰えていくんじゃなかろうか。

wild dogs
(職場の前の野良犬ども。別に危害を加えてくることはない。)

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