「ギム・ボー?」の謎 ~ キルギス人の電話マナー ~

子供の頃や就職した後に、電話のマナーをいろいろ教え聞かされたものだ。夜分の電話は控える。かけたら、今、電話をしても大丈夫か相手に尋ねる。かけた方が切るまで受けた方は切らない、など。

そういう電話マナーの一つに、「電話をかけたら自分から名乗る」というのがある。携帯が普及した現在では、登録された番号ならば、誰からかかってきたのか画面に表示されるから、名前を聞かずとも誰なのかわかるが、相手方に番号が登録されていないこともあるし、やはり名乗るマナーは変わらない。

しかし、ここキルギスでは名乗らずに電話をかける人もまま見かける。面白いのは、

A(受話者):はい、もしもし。
B(発信者):もしもし、元気?
A:元気よ。そっちはどう? 体調とか仕事とか順調なの?
B:順調順調。ご心配ありがとう。今、どこにいるの?
A:今、車で○○に向かっているところ。で、あんた、誰?

というやり取りである。誰からかかってきたかわからないまま、まずは定型の挨拶をしていくのである。文字に起こしただけでは、臨場感を再現しきれないのだが、時には30秒くらい親しげに話した後、「あなた、誰?」と訊いていることもある。キルギス語では「ギム・ボー?」と言う。英語だと"Who is this?"(これ誰?)になる。この「ギム・ボー?」が出ると、私は「新婚さんいらっしゃい」の三枝ばりにいすからずっこけたくなるのだ。

賢明な読者ならすでにもう一つのオチも読めていると思うが、30秒くらいあれこれとやり取りした後、「ギム・ボー?」が飛び出し、名前を名乗った後に、間違い電話であると判明することがある…。落語とか吉本新喜劇なんかでは定番の(?)オチだが、それをギャグ抜きで現実にやっている人たちがいる。ここにいる。

そうだ。電話マナーの一つとして、「間違い電話をかけたら、きちんと謝る」と教えられたものだが、キルギスでは、間違った相手にかけたとわかったら、何も言わずに切る人が多い。間違われたほうも、そんなものだと思っているようで、別に不快という感じも見せない。

マナーの多くが、世界どこでも共通でないことの好例である。

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