(「マルシュ」は定路運行の乗合バス、маршрутка/マルシュルートカ/のこと。)
キルギス人の家では、牛や羊、馬などの家畜を飼育している(イスラム教徒なので豚はいない)。
夏場は山腹のほうに、飼育に適した草が生えるので、ジャイロー(жайлоо)と呼ばれる放牧地に、家畜を連れて行き、羊飼いに預けてそこでひと夏を過ごさせる。
10月頃には、山のほうは気温が下がり、草もなくなってくるためだろう、家畜たちはジャイローを引き上げ、村の各家に戻される。
なぜ、こんな話が乗り物のマルシュと関係があるのか。
冬の間、村に戻された家畜たちは、日中の間、村はずれの平原などに移動させられ、そこで草を食べて過ごす。そして夕方、日が沈む前に家になるとそれぞれに家に戻ってくる。
だから、この秋から冬の時季、田舎道を通ると、そこかしこに馬、牛、羊が草を求めてウロウロしている。普段、牛や羊が離されている環境で暮らしている日本人など、ほとんどいないから誰も知らぬだろうが、こういった草食動物たちというのは、平原なら平原の一ヶ所でずっと草を食べているわけではない。考えてみれば当然だ。同じ所で食べていれば、自分たちが草を食べ尽くしてしまう。したがって、牛や羊たちは、少しずつ場所をずらしながら、草が生えている所を求めて動いていくのである。
家畜たちが平原の中だけを移動しているなら何も問題はないのだが、時に平原の中に道が通っていることがある。いやなに、人間が平原の中に道を作ったまでのことで、牛や羊らにしてみれば、道を隔てた向こう側の平原においしそうな草があれば、そっちへ移動するまでのことだ。
このようなわけで、冬場は都市間を結ぶ幹線道路でも牛、羊、馬が横切っていることがしばしばある。
私たち協力隊員は、キルギス国内で移動する時はマルシュ、または長距離タクシーに乗るしかないが、自分の乗っているマルシュ、タクシーの前に牛などが横切る時があって、これがたまにヒヤッとする。
マルシュが100km/hを超えて走っている前方に、道の真ん中に牛がのっそのっそと歩いている。ぶつかれば、もちろん牛は死ぬだろうが、車のほうもただでは済むまい…。
上の写真はマルシュではないが、状況としてはこんな感じである。牛が通行車両にお構いなく、マイペースで道を渡っていき、車がそれを避ける、または停車して待つのが伝わるだろうか。
私が見るところ、一番、車に動じないのはロバ。車からどんなにクラクションをならされても、ジ~っと立っていることがある。ちなみに、犬というのは車が来たら避けることを知っていて、道を渡る時にもちゃんと見ている(それでも轢かれてしまうことはあるのだが…)。
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