2012/01/05

変換されない言葉 ~日本語変換雑感(3)~

協力隊ブログからはかなりテーマが外れているのだが、勢いで続ける。

パソコンの日本語変換ソフトに、私には解せないことある。一部の言葉を敢えて変換候補から外していることである。特に障害を表す言葉はそうである。

例を挙げれば「きちがい(気違い・気狂い)」「めくら(盲)」「つんぼ(聾)」などである。

「福祉に従事するお前がそんなことを言ってよいのか!」と糾弾されるかも知れない。確かに上に例示した3つは、現在は「精神障害者」「視覚障害者」「聴覚障害者」とそれぞれ表記される言葉である。それらの障害のある人に向かって、上のような呼び方をするのは人権侵害となるし、「己の欲せざる所は人に施す勿《なか》れ」という孔子の教えを引き出すべくもなく、他人に使うべきでないと考える。

しかし、そのことと言語史の問題は別ではないか? 現に、日本語の歴史の中で上に挙げたような言葉が使われた時代はあったわけだし、現在でも文章中で書くことはあり得る(時代ものの小説を書くとか)。侍の小説で「そこの盲坊主!」という台詞を「そこの視覚障害の僧!」と書き換えることはできない。

「いや、どんな場合でも、そんな言葉を使うのはけしからんのであって、変換候補から除外するべきだ」と考える人もいるだろうが、そういう人たちが言う「そんな言葉」という規定は、どうしたって恣意的な基準に依らざるを得ないわけで、そういう基準で「これは正しい、これは悪い」と規定するのは危険なことだと思う。

日本語変換ソフトの機能で、日本語の誤用・不適切用法があった場合に「《ら抜き》言葉」とか「近ずく《近づく》の誤り」とか出るのだから、もし、通常は使うことが適切でない言葉があるなら、「蔑称語・差別語」と表示して注意を促せばどうだろう。

一頃、昭和40~50年代のテレビ番組(ドラマ、アニメ)の再放送で、「ピー」という音消しが盛んだった頃があった。「木枯らし紋次郎」なんかは、再放送では「このP野郎! てめぇなんかPに行って、PとPしやがれ!」みたいなことになっていて、何を言っているんだかさっぱり分からないシーンも度々あった(それが返ってドラマの迫力を出していたかも知れないが)。

近頃は、そういった再放送ドラマでも、冒頭に「このドラマには現在では不適切・差別的な表現が含まれていますが、作品放送時の時代背景を考慮し、ノーカット・無編集でお送りします」と断りを入れて、作品のオリジナルのまま放送することが増えた。私はそれで良いと思う。やたらと「ピー、ピー」鳴っていては意味が分からなくなるし(ギャグとしては良いが)、外部からの非難を恐れて再放送を止めてしまえば、我々は過去の作品を見る機会が減ってしまう。

日本語変換もそれと同じように対処すれば良いと思う。

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