2011/04/21

キルギスの病院 (2)

どうやら彼は事前に医者の診察を受けていたらしく、医者が書いた「要レントゲン撮影」のような紙切れを持って、レントゲン撮影の建物(平屋)へ。その紙を見せてレントゲン室へ。「室」といっても、壁とかは普通の家の素材と同じではないかと思うくらい、普通の部屋で、日本の病院にあるレントゲン室と比べると2倍くらいの広さで、だだっ広く感じられた。もちろん、撮影の時は中に入れないから、チラッと見ただけである。ちなみに技師は中年の女性。

撮影後5分くらいで現像をしてもらい、それを持って診察棟のほうへ移動。患者が自分でレントゲン写真を受け取って、診察室に持っていくのって、日本ではやらないのではないか? 少なくとも私は経験したことがない。

レントゲン技師からは、「こことここが折れているみたいだ。手術になるんじゃないか」と言われ、写真を見たら、私にでもわかる感じで小さく骨が2ヶ所突き出ていた。手術はどんな感じでやるのだろうと興味よりも、恐怖感のほうが広がってきた(私は注射とか切開とかをされるのも見るのも苦手なのである)。

そしていざ診察室(らしき)ところに行き、「ドクターですか? 診察をしてもらいたいのですが」という感じで入っていく。診察券とか、診察の順番とかなし。これも日本では考えられない(実際のところ、診察棟には人気がほとんど無く、順番を云々《うんぬん》する必要はなかったが)。

部屋の中には二人の男が座っており、奥側、窓を背にしているほうが偉い感じ。二人共医者であろう。まず、手前(出入り口に近いほう)にいた医者が応対。レントゲン写真を見て、「なんで怪我をしたのか?」など聞き取りをしている。その後、「これはいかがなもんでしょう?」と訊かれて、奥の医者もレントゲンを見る。痛めているほうの手を握れるかなど尋ねていた。

せっかくの機会なので、私は途中で部屋を出て、病院内の他のところもチラチラと見て回っていたが、5分くらいして職場の同僚が診察室から出てきて、そのまま帰ることに。帰りの道すがら聞いたところでは、医者からは、しばらくすれば骨が固まるから手術はしないでよいと言われたらしい。ただし、骨が変形するので、元の通りには手を握ったりできないだろうとも言われたようだ。つまり後遺症が残ると言われた訳だが、日本でなら、そうならないために手術をするのが一般的な治療方針ではないだろうか。

手術となればさらに金がかかるので、本人の方から手術を断ったのかも知れない。あるいは、医者の方から、村民の懐《ふところ》事情を察して、手術を回避したのか…。いずれにしても、金がないために、手術をすればなんということのない怪我も、後遺症が残るのも避けられない現実があるということだ。

結局、診察で彼が得たものは薬の処方箋1枚で、病院からそのまま薬局に行ったのだが、処方された薬の値段が高いので、買うのをあきらめて帰って行ったのであった。

これに懲りて、彼が酒に酔って乱闘をする馬鹿をしないよう改まればよいが…。実は、彼、新年明けにも目を腫らせて出勤してきて、「新年で飲んだ帰り、道でからまれて喧嘩した」と言っていたのである。まあ、私もだらしない酒飲みの一人として思うが、酒癖というのは一生変わらんもので、この人は、そのうちにまた酔って乱闘をするにちがいない。そして、酒によって招いた災厄は、誰からも同情されないのも世の常なのである。

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