2012/01/17

肥満の美学

日本では「メタボ」は健康の大敵として喧伝され続けているが、面白いことに途上国の多くでは、太ることが奨励される風潮がある。貧しくて食事が思う存分食べられないことがあることの裏返し、あるいは太ることへの憧れのためにそういうのかも知れない。

キルギスでも、特に女性は太ることが良しとされる。これは出産、授乳などをする上で、栄養を蓄えておくとよいという古来からの知恵だとも受け取れる。

男に関しても、日本語で言う「恰幅《かっぷく》が良い」風貌を良しとするところがあるようだ。特に、夫が痩せている場合、その妻(嫁)がきちんと夫に仕えていないのではないかと、後ろ指を指されると聞く。私なら「ほっとけ」と思うが、ここの社会で育ち暮らしている人たちにしてみれば、そう簡単に開き直って無視するわけにもいかないのである。

一方で、医学的な知識は時と共に住民の間にも拡まっていくし、テレビ・雑誌などを通じて海外のモデルなどを見ることでそれに憧れる若者層は増えているだろうから、「肥えろ、太れ」という風潮は次第に減っていくんじゃないかと思う。

そうやって時代の風潮が変わっていく中で、気の毒なのは、「肥えろ、太れ」の時代を生きてきて、今やすごい立派なご体型になっている年輩の女性たちである。糖尿病をはじめ、過体重による腰・関節の痛みとか、色々と抱えている様子である。

年上の女性のことは「эже /エジェ/」と呼ぶが、横幅が私の1.5倍はあるエジェたちを見ることも決して少なくない。こういうエジェたちと、乗り合いバス、タクシーで並ぶ時は大変である。2人がけの座席に、1.5倍幅の人が2人座ったらどうなるか…? 言わずもがなであろう。

日本も昔はふくよかな体型の女性のほうが美しいとされていたと聞いたことがある。日本国民の多くが、まだ貧困生活を送っていた頃の話だろう。この辺り、経済的な豊かさと相関するものがあるとのかも。今はまだやせ形のタレント、モデルがもてはやされているが、これがふくよか型になってきたら、いよいよ日本の経済も衰退してきた証なのかも知れない。

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