2011/04/02

「福島」は「フクシマ」になった (1)

日本の大震災に関して、ここ最近、テレビのニュースは見られていないが、当初の連日トップで扱われていたものが、2番目、3番目のトピックとして扱われるようになっているようだ。

一方、ここ最近はラジオでニュースを聞くことが多くなっている。どこの国の放送でも、ニュースは正時に始まるから、言語が理解できなくてもニュースをやっていることは分かる。短波ラジオでBBC(英語)やその他の言語(キルギス語、ロシア語、中国語、など)のニュースに耳を傾けていると、「Fukushima ナントカ、カントカ」と言っているのが聞き取れる。中には「Fukushima Daiichi」と言っている放送局もある。

いまや世界中のメディアで、福島原発のニュースは連日扱われ、その破損と放射能拡散の状況は全世界の人に報道されている。「日本にある原発」ではなく、直接「福島原発」として認識されているということだ。それは、かつて我々日本人(いや、日本人だけでなく世界中の人)には縁もゆかりもなかった「チェルノブイリ」という名が、恐怖と不安の感情と共に我々の記憶に刻まれたように、福島原発の名も全世界史に不名誉な形で残ることになる。

「福島」は日本語だけで語られる固有名詞ではなくなっており、「フクシマ」となった感がある。

そうだ、日本には過去にも同じように全人類的な固有名詞になった地名があった。「ヒロシマ」「ナガサキ」である。この二つの地名は、かつて私が隊員生活を送ったマレーシア、今いるキルギスでも皆が知っている。結構な田舎の住民でも、義務教育程度まで修了した人なら必ず習っている。

余談だが、「ヒロシマ」「フクシマ」ともに「~シマ」が付くので、外国人にとっては、「日本には“シマ”で終わる地名が多い」という印象を持つ人がいる気がする。実際、「~島」という地名は、日本では無数にある(都道府県だけで徳島、鹿児島も「島」がつく)。日本は、国自体が列島で成り立っているから、「島」のつく地名が多いのは当然である(と、日本人なら思う)。

ちょっと地理好きの人なら、日本は大きく4つの島で構成されていることも知っている。北から北海道・本州・四国・九州。今回の福島原発危機に関連して、「お前の家族は大丈夫か?」と心を配ってくれる人が多いが、やりとりの中で「フクシマはどの島にある?」と訊かれ、私が「ホンシュー」と答え、「お前の家族はどの島に住んでいる?」と質問が続き、「家族はホンシューに住んでいる」と答えると、相手は一層心配してくれる。

本州と一口に言っても、青森から山口まで広いのであるが、さすがにそこまで知っている人には会ったことがない。「島」の持つ語感から、同じ島(ホンシュー)に住んでいる人はみんな避難しなくてはならない、と思ってしまうのだろう(旧ソ連で起こったチェルノブイリ原発事故について、気になってウィキってみたら、私はロシアで起こった事故だと思っていたのが、実はチェルノブイリはウクライナにあることを知った。私も「ソ連=ロシア」と先入観で思ってしまっていた)。自分の知っている本州と相手のイメージが食い違うので、こちらとしては調子が狂ってしまう(もちろん、心配してくれる気持ちはありがく受けている)。

世界史の中に、ヒロシマ、ナガサキに続いてフクシマが加わったことの事実。ここ数日、そのことはどういうことなのかと問いがたびたび浮かんでいる。

0 件のコメント:

コメントを投稿