カレンダーの曜日の始まり(左端)は日曜日か月曜日か。茶のみ話でしばしば白熱するテーマである。
日本では、カレンダーや手帳の曜日は「日曜始まり」「月曜始まり」、どちらも見かける。私が百均で買って使っていたスケジュール帳は月曜始まりで、右端の土曜・日曜の横幅が広かった。子供が買うことが多いから、週末の予定が多く書き込めるようになっていたのかもしれない(そんな手帳で事足りていたんだね、私のスケジュールは)。
「日曜始まり、月曜始まりのどちらでも大差なかろう」と、日本人なら思うのだが、面白いことに、ロシア語やキルギス語では、カレンダーの曜日をどちらで始めるかは迷う余地がないのである。
日本語 | ロシア語 | キルギス語 |
月曜日 | понедельник | биринчи күн |
火曜日 | вторник | экинчи күн |
水曜日 | среда | үчүнчү күн |
木曜日 | четверг | төртнчү күн |
金曜日 | пятница | бешинчи күн |
土曜日 | суббота | алтынчы күн |
日曜日 | воскресенье | дем алыш күн |
これだけではほとんどの方は分からないだろうから、まずロシア語から解説すると、понедельникは「по(始まり)」+「неделя(週)」で、「週の始まり」の日となる。名前そのものが週の始まりであることを表わしているのである。当然、カレンダーも月曜始まりのものしかない。
これで最初に挙げた疑問は解けたのであるが、ついでに以下の曜日も見てみよう。
вторник | второй(2番目)→ 2番目の日 |
среда | среди(真ん中)→ 週の真ん中の日 |
четверг | четвёртый(4番目)→ 4番目の日 |
пятница | пятый(5番目)→ 5番目の日 |
суббота | (アラム語かヘブライ語起源) |
воскресенье | воскресение(復活)→ 復活の日 |
火・木・金曜は、月曜を始まりとした時の順番が基準となっている。水曜を真ん中として扱うのも、日本人の感覚と同じで興味深い。月曜始まり、日曜終わりで見れば、週の真ん中は木曜になるはずなのに、水曜を真ん中だと思うのは、平日だけで考えているからだ。週休2日の職場なら、水曜日は「やっと週の真ん中だ」と思う人が多かろう。
土曜のсубботаは、辞書によればアラム語かヘブライ語に起源があるとのことだから、キリスト教の伝来と関係がありそうだ。
日曜の「復活」を見てピンと来た人も多いと思うが、もちろんこれはキリストの復活に関係づけられている。キリスト教では、イエスは金曜日に磔刑に処せられ、日曜日に復活したと信仰されている。聖書から引用してみよう。
さて、安息日が終わって、週の初めの日の夜明け方に、マグダラのマリヤとほかのマリヤとが、墓を見に来た。(マタイ福音書28:1)
処刑されたイエスの墓に、イエスの母マリヤたちが行ったという話である。この後、墓は空になっていて、イエスは復活した、と続いていく。
さて、気づかれた方もいるだろうが、引用した聖書によれば、イエスが復活した日(日曜日)は「週の初めの日」として書かれている。ちなみに「安息日」はユダヤ教の土曜日である。イエスが生きた時代、および聖書が書かれたのはユダヤ教信仰の時代であったから、こう書かれたのである。
詳しくは別に書くことにするが、ユダヤ教では週の始まりは日曜日、そして土曜日が休みの日である。休みというのは正確ではない。土曜は礼拝の日である。それが、キリスト教が興《おこ》って、ローマ帝国の国教となる歴史の過程で、イエスが復活した(と信じている)日曜が礼拝日になっていったのだろう。
このことから、ロシア語の曜日名には、キリスト教の影響が強く伺えるのである。キリスト教伝来以前にもロシア語の元となる言語(ロシア語はスラブ語系の言語である)はあったのはずで、その頃にはどのように曜日を扱っていたのか興味がわいてくる。
0 件のコメント:
コメントを投稿