任地であるバコンバエバ村に来た当初、一つ驚いたのは、村の商店のどこを探してもティッシュペーパーが売っていなかったことだ。
そもそも、キルギスの人たちがティッシュペーパーを使っているのを見ることがほとんどない。日本だったら、大抵の人はポケットやかばんに入れているだろうし、家ならボックスティッシュが必ずある。
キルギスに入って最初の一ヶ月は首都ビシュケクで過ごした。首都には「НАРОДНЫЙ(ナロードニー、訳せば“国民の、大衆的な”)」というチェーンのスーパーマーケットがそこかしこにあって、ティッシュペーパーも何種類も置かれていたから、まさか村では売っていないとは予想もしていなかった。
手持ちのティッシュが少なくなったので、買おうと思って店を回ったが、どこにも置いていなかったときはあせった。鼻をかむ時はティッシュを半分に切って、残りのティッシュを節約するようにした(別の隊員は、重なっているティッシュを一枚一枚はがして使っていた)。涙なくして語れない話であるが、涙を拭くのにティッシュを使うのはもったいないので、ここはグッと涙をこらえて書き進めよう。
その後、健康診断やセミナーの手伝いなどでスーパーのある町に行く機会があれば、ティッシュを買い溜めするようにして、ティッシュ切れの事態に陥らないようにしている。ただし、相変わらず半分に切って使っている。今の私にとってはティッシュペーパーは貴重品なのである。
それにしても、現地の人たちは鼻をかみたい時はどうするんだろう? ということが、当然ながら疑問となる。
いくつかのパターンがあるようだ。一つは、トイレットペーパーを使う。ただ、こちらのトイレットペーパーは日本のに比べると固くてごわごわしてるので、それで鼻の中を掃除しようものなら、粘膜を傷つけ鼻血が出るのではないかと思う。
ペーパーナプキン(テーブルナプキンというのかな?)はどこでも売られているから、そちらのほうが汎用性は高いかもしれない。同期隊員の一人は、ティッシュは買わずにペーパーナプキンを使っているようだ。
トイレットペーパーにせよ、ペーパーナプキンにせよ、現地の人の感覚では高い物になってしまうのかもしれない。そうなると、ただで鼻をかむ方法を使うしかない。すなわち「手鼻をかむ」やり方である。
今の日本で手鼻をかんでいる人を路上で見かけることなんてないよなぁ…(風呂でやる人は多いだろうけど)。こちらでは割と頻繁に見る。ある日、たまたま道の先を歩いていた男性が手鼻をかむのを見て、これならティッシュは不要だということに気づいた。
手鼻は女性はめったにやらないと思うので、女性はペーパーナプキンを使っているんだろうか?
手鼻をかんでいるということで、ティッシュペーパーの代用をどうしているかという疑問は、私の中ではとりあえず解決したのであるが、同時に新たな疑問が起こってしまった。
一体、あの手はどこで洗うんだろ…?
0 件のコメント:
コメントを投稿