前回はロシア語の話だったので、今回はキルギスの国語であるキルギス語である。こちらはロシア語よりも説明が簡潔に済む。
まず数詞(1,2,3…)があって、序数詞(1番目、2番目、3番目…)ができる。それに「日」を表わすкүнを合わせると曜日になる。
1 | бир /ビル/ | биринчи(1番目) | биринчи күн(1番目の日) |
2 | эки /エキ/ | экинчи(2番目) | экинчи күн(2番目の日) |
3 | үч /ウチュ/ | үчүнчү(3番目) | үчүнчү күн(3番目の日) |
4 | төрт /トゥルト/ | төртүнчү(4番目) | төртүнчү күн(4番目の日) |
5 | беш /ベシ/ | бешинчи(5番目) | бешинчи күн(5番目の日) |
6 | алты /アルティ/ | алтынчы(6番目) | алтынчы күн(6番目の日) |
以上、月曜から土曜まで順になっている。明瞭である。日曜日だけは「дем алыш(休息)күн(日)」と呼んでおり、「7番目の日」とは言わないようだ(俗語ではあるかも知れない)。
キルギス語の名誉(?)のために言っておくと、本来は正式な曜日名があるのである。私自身、意味は分からないののだが書いておくと、
月:дүйшөмбү /ドゥイショムブ/
火:шейшемби /シェイシェムビ/
水:шаршемби /シャルシェムビ/
木:бейшемби /ベイシェムビ/
金:жума /ジュマ/
土:ишемби /イシェムビ/
日:жекшемби /ジェクシェムビ/
皆「~シェムビ」の語尾で終わっているのに、金曜日だけは「ジュマ」である。
ジュマと聞いて、私はすぐに思い出したことがある。私が前回協力隊で赴任したマレーシアの国語、マレー語でも金曜日は「hari Jumaat /ハリ ジュマアット/」と呼んでいるのである。ジュマ(キルギス語)とジュマアット(マレー語)は似ている。ちなみに、hariは「日」という意味。
これはアラビア語にルーツがある言葉であるはずだ。手元にある『イスラームの世界地図』(21世紀研究編、2002年、文春文庫)を参考にしてみると、アラビア語で金曜日は「ヤウム・アルジュムア」と呼ぶのだそうだ(28頁)。この呼称が、イスラム教の普及と共に各言語に伝わったのだろう。ちなみにアラビア語の意味は「第6曜日」だそうだ。これはユダヤ教の系統である影響か?
マレー語では、金曜以外の曜日もすべてアラビア語の音写が単語になっていた(例えば月曜のhari Ahadの「アハッド」)。キルギス語で金曜だけがアラビア語の音写で使っているのは、イスラム教では金曜日は集団礼拝の日と定められた重要な日であるからであろう。
曜日の呼称のような単純に思われることでも、その背景には宗教的な影響もあることがわかって面白い。