床屋がうれしがる

髪を切りに散髪屋に行った。どのように切るかと理容師に尋ねられたが、私にとっては髪形の注文を言葉で説明するのは、日本において日本語でするのですら難しく感じる場合があることである。

別にアイドルでもファッションモデルでもないので、「見た目が変でなければなんでもいい」というのが、私の注文なのであるが、当然、それでは向こう(理容師)もやりづらい。正直なところ、「プロのあなた(理容師)がいいと思うようにやってください」とおまかせにしたいのだが、その結果、不満を言う客もいるだろうから、理容師側も客の望みを訊かずにはおれないということだろう。

そんなふうに難しいと感じる散髪の注文である。いわんや、ロシア語で、となればなおさらである。

今回、入った散髪屋は3人の理容師がいて、うち2人が男、1人が女。私の担当になったのは男であり、その人の髪の長さもだいたい私が切ってもらいたい程度の短さだったので、「どうするの?」と訊かれた時、「あなたと同じような感じで」と答えた。キルギスでも日本でも「フツー」という印象の髪形である。

で、しばらく散髪作業が進んだところで、理容師が「『オレとおんなじように』って注文した人は初めてだ」と言ってきた。実際、そうなのだろう。推察するに、キルギスの男性でそういう注文するのは一般的ではないのだろう。

いや、日本でだって、「床屋さんとおんなじ感じで」と頼む人は聞いたことがない。私も日本語ではそういう注文をしたことがない。面倒とはいいながら、「横、ちょっと刈り上げ気味で…」みたいに説明する。

「そんなふうに注文されるのは初めてだ」と言いながら、理容師の男はちょっと照れるというか、満足気というか、小さな笑いを顔に浮かべていた。間接的には自分の髪形を褒められたと受け取れなくもないから、それでうれしくなったのかもしれない。

10分強で散髪は終わった。値段は100ソム(バコンバエバ村では50ソムだったと記憶しているから、倍である)。ちなみに、こちらでは洗髪はないのが普通である(「美容室」であればあるかも。私は入ったことがないのでわからないが)。

この話にオチをつけるとしたら、その理容師の髪形が、モヒカンとかでなくてよかった、ということである。

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