2012/05/04

アテレコとか、字幕とか、副音声とか (2)

テレビ番組での吹き替えの話を書いていて思い出したので、マレーシアのテレビ番組について書いておく(約8年前の話だが、おそらく今も変わっていないだろうと思う)。

マレーシアの国語はマレーシア語であるが、これはつまるところマレー語である。マレー語はマレー人の母語である。マレー人以外の民族も多数いるあの国では、マレー語を母語とすると感情的な反発もあるので、マレーシア語という言い方にしているのではないか、と、これは私の推測である。

マレー人以外の民族とは、中国系、インド系、そのほかの各地の諸部族である。中国系、インド系は人口の3~4割を占めるほどであったから、決して少数ではない(地域によっても民族比率は大きく異なるのがマレーシアの特徴であった)。

そういう民族構成の中なので、テレビ番組もマレーシアで作られたものの他に、中国・台湾、インドから輸入されたものも多々流されていた。そして、それらは原語のままなのであった。というのも、原語のままでも理解できる国民が一定数いるからなのであろう。

しかし、そのままでは中国語、ヒンドゥー語を解さない人は番組を理解できないわけで、そのためにマレーシア語で字幕が表示されているのであった。これならばマレー人も内容を理解できる。

この逆の、マレーシア語(=マレー語)の番組に、中国語・ヒンドゥー語の字幕を付けていたかは、ちょっと憶えていない。あったような、なかったような気がする。

このようにマレーシア語の字幕が入っているのは、マレーシア語学習者としての自分にはとてもありがたかった。中国語・ヒンドゥー語ともに私は分からなかったので、マレーシア語の字幕を見て、それなりに内容を理解できたということと、字幕からマレーシア語の言い回しを学ぶことができた。

面白かったのは、中国語の番組に中国語の字幕が付けられていたことである。「なんで?」と思ったのだが、これは、中国は広い国で、言語も地域ごとに大別して4つくらいあるらしいのである(正確な情報ではないから数字は鵜呑みにするべからず)。いわゆる「中国語」と言っているのは北京語であって、それ以外に広東語、福建語とかあるらしいのだ。

というわけで、中国語の番組といっても、広東語で制作された番組であれば北京語の字幕を付ける、といったような配慮が必要になるというわけなのであった。

で、そのような中国語字幕の番組というのは、音声を聞くだけでは皆目分からないのであるが、字幕は漢字なので、なんとなく雰囲気が分かる(場合もある)のだった。ありがたや漢字文化(私は漢字好きなので、余計にそう思うのかも知れぬ。ただし、中国語は簡体文字といって、漢字を略式にしてしまっているのでもったいない。日本でも漢字はかなり略してしまっていて、漢字の成立が分からないようにしてしまっている。台湾は繁体文字といって、日本でいう旧字で通しているから、手で書く場合の手間はあるが、一番、漢字を大事にしているとも言える)。

キルギスでは、ロシア語の番組(いや、キルギス語の番組も含めて)にはロシア語の字幕が出ない。せめて、キルギス語の番組にはロシア語の字幕、ロシア語の番組にはキルギス語の字幕、というふうにしてくれると、ロシア語・キルギス語の学習に役立つのだが、どうもこの国ではそういうふうに字幕が役立つという感覚はないらしい。まあ、日本でも、文字放送は別にして、いちいち日本語の字幕を付けることはないのだから、同じことなのであるが…。

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